特定非営利活動法人 イージェイネット(Ejnet)

医療業界の就労環境改善や、適正な人材評価が行われるための仕組みづくりをお手伝いします。

Ejnetメルマガバックナンバー・第30号

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◆◇NPO法人イージェイネット メールマガジン第30号◇◆ 
「時代をリードする医療人が働きやすい病院の作り方、お教えします」 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2012/5/30 ━━━ 

◆◇━━━━━━━━◆◇◆今月のニュース◆◇◆━━━━━━━━━◆◇ 
〔1〕『産婦人科から医師のワークライフバランスの実現に向けて』
  ◆日本赤十字社医療センター 第三産婦人科部長 木戸 道子 氏
〔2〕「産婦人科から発信する男女共同参画」~医療は誰のためのものか~   
    ◆福井県済生会病院女性診療センター産婦人科医長
                         イージェイネット副代表理事
                                                  里見 裕之 氏 
〔3〕イージェイネット事務局からのお知らせ
  働きやすい病院評価事業(ホスピレート)説明会(6月)など
〔4〕メルマガ事務局より編集後記

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〔1〕 『産婦人科から医師のワークライフバランスの実現に向けて』

 数年前に産婦人科医師不足が社会問題になり、過酷な勤務の様子がテレビ
ドラマでも放映されたこともあった。産婦人科は昼夜を問わずお産でコール
される、訴訟リスクが高い、などによりやりがいはあるが「きつい」診療科
というイメージをもたれている。
 産婦人科だけにとどまらず、当直という名の実質夜勤をはさんで30時間を
超える長時間連続勤務は医師の過重労働、それによる医療ミスや事故、スタ
ッフのバーンアウトを招く元になる。長時間にわたって家を不在にするのが
困難な場合には特にその負担は大きく、当直も行う常勤として勤務すること
を多くの場合、諦めざるを得ない。しかも若手医師では女性の割合が高く、
とくに20代では7割を占めている。
 学会、医会ではこうした問題の解決に向けてさまざまな取り組みが行われ
ている。また、それぞれの現場においてもシステムの工夫を行い、成果をあ
げてきている施設がある。
下記の厚生労働省のサイトにおいて中医協資料「医療提供体制について(そ
の4)」をご覧頂きたい。
*P48~58:「(ⅳ)交代勤務制」内を参照
 この中で「病院医療従事者の負担軽減事例の実態調査」に基づく交代勤務
制導入の実例が掲載されており、聖マリア病院産科、藤沢市民病院小児科、
徳島赤十字病院小児科とともに日本赤十字社医療センター産婦人科における
取り組みが紹介されている。
 詳細は資料にあるが、ポイントは長時間連続勤務を行わずに「夜勤は夜間
だけ働く」ということである。すなわち夜勤者は夜に出勤し翌朝には帰宅す
る。前日と当日の夜勤者は日勤帯にはともに不在となるので、ある程度の人
員が必要になる。
 交代勤務によりワークライフバランスは改善し、夜勤前後に心身の休養を
とり、妊産婦さんや患者さんに質の高い医療を提供することができる。また、
この休養時間を利用して家族と過ごす、地域活動、PTA活動、医師会や学
会などの活動への参加、スキルアップ、健康管理などへの余裕が産まれる。
このため、育児中、遠距離介護が必要な家族がいる、週末を利用して学会や
旅行に行きたい、などさまざまな背景をもつ場合にも当直免除や非常勤、パ
ート、離職などせずとも常勤を続けることが可能となっている。
 疲れてぎりぎりの状態ではよい仕事はできない。質の高い医療やケア、そ
して笑顔で妊産婦、患者、家族やスタッフに接する心身のゆとりが欠かせな
い。
 もちろん、まだまだぎりぎりの人数で長時間連続勤務を余儀なくされてい
る医療施設がほとんどであるが、変えられるところからスタートし、前例を
作り実績を積み重ねていくことが大切であろう。今後さらに多くの施設で同
様の取り組みが進んでいくことが期待される。
    ◆日本赤十字社医療センター 第三産婦人科部長 木戸道子 氏
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〔2〕「産婦人科から発信する男女共同参画」~医療は誰のためのものか~
   
    ◆福井県済生会病院女性診療センター産婦人科医長
                              イージェイネット副代表理事
                                                   里見 裕之 氏
【福井県済生会病院について】
 当院が「働きやすい病院」を目標にホスピレートを受審し、5年が経過し
ました。日々、SQM(Saiseikai Quality Management system)に基づき、変
革に取り組んでいるところですが、真の「患者満足度」と「職員満足度」に
は正の相関がある結果が出ています。つまり、よりよい職場環境の構築が働
き甲斐のある病院と患者さんに選ばれる病院につながると考えています。
 我々は、現場の医師を中心とした職員が、「患者さんの立場で考える」理
念の下で、チーム医療を推進してはじめて、安全で質の高い医療を提供でき
ると確信しています。女性職員のキャリアサポートもその手段の一つに過ぎ
ません。キャリアサポートといっても制度だけや過剰なサポートが必ずしも
有用とは限りません。サポートされた側が当たり前でもなく、引け目も感じ
ることもない思いやりこそが一番有効であると実感しています。
【変革こそが当院の強み】
 まず、職員を大切にし、人材育成のための教育環境を整えることが人づく
りの第一歩と考え、学会活動や職員研修などの教育と子育て支援に対して力
を入れています。自分たちの病院を愛している職員こそ、「人財」と言える
のではないでしょうか。さらに医師同士や他職種とのコミュニケーションの
向上のために、様々な工夫をしています。
 「チーム医療」を医療の質を担保するものとして位置づけ推進しています。
医師は「チーム医療」におけるリーダーです。そのため医師へのサポートを
惜しみません。事務職員も医師の過酷な仕事を理解しています。当院のメデ
ィカルコーディネーターは医師の説明に補足が必要であれば行う役割を担っ
ています。また、よろず相談外来のスタッフはスムーズな病診連携のための
お話や患者さんやその家族の悩みなどの相談を引き受けます。さらに、この
春からは術前検査センターを立ち上げ、術前検査にまつわる煩瑣な業務を代
行します。そして、医師事務作業補助体制は医事課を中心に、学会発表は学
術局がサポートしています。
 職員の70%以上が女性であり、この職種の大多数が女性職員です。お互い
に助け合うことによって、良い結果とコミュニケーションを生みだし、それ
ぞれの存在意義が高まっていく土壌ができていきます。
【情けは人のためならず】
 女性医師は大変責任感が強い方が多いと感じています。そのため自己目標
のハードルを下げることがなかなか難しい方もおられます。女性医師が復職
にためらいがあるのはそのためだと強く思っています。病診連携、2人主治
医制などを取り入れて、チーム医療を推進している病院であれば、感じる責
任の負担も少し軽くなるのではないでしょうか。主治医制のメリットは成長
期の医師にとっても、患者さんにとっても大きかったと思いますが、今後は
チーム医療の推進こそが、女性医師はもとより医師全体の就労環境の改善に
直結すると考えています。女性は家庭に帰っても、さらに仕事が待っている
という現実が見える医療人でないと、本当の意味で同僚にも患者さんにも優
しくできないと思います。この理解のある上司、同僚こそが、同じ医療人で
ある女性医師を仲間として復職させることができるキーマンなのです。
【イベント実施報告】
 平成24年4月13日(金)、9 : 00~11 : 00
 第64回日本産科婦人科学会学術講演会
 <男女共同参画・女性の健康週間委員会企画>
 産婦人科から発信する男女共同参画
       ―より充実した研修とキャリア継続のために―
 座長:日本医科大学    竹下俊行先生
   母子愛育会愛育病院 安達知子先生
 ①若手女性医師の立場から:筑波大学 志鎌あゆみ先生
 ②中堅子育て中の女性医師の立場から:愛育病院 川名有紀子先生
 ③キャリアモデル女性医師の立場から:独協医科大学 望月 善子先生
 ④男女共同参画推進の男性医師の立場から:福井県済生会病院 里見 裕之
 ⑤管理職男性医師の立場から:聖路加国際病院 百枝 幹雄先生
*里見裕之氏の講演の抄録を掲載いたします。
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〔5〕イージェイネット事務局からのお知らせ

①働きやすい病院評価事業(ホスピレート)説明会(6~7月)
*準備の都合上、3日前までにお申込ください。
【東京会場】
【日程】H24年6月26日(火)午後1時~2時
       7月24日(火)午後1時~2時
【場所】株式会社アポプラスステーション 会議室
    〒102-0071 東京都千代田区富士見二丁目7番2号
    ステージビルディング9F・10F
    JR飯田橋駅 東口/西口 徒歩3分
    東京メトロ 飯田橋駅 東西線 A4出口、有楽町線/
    南北線 B2a出口 徒歩2分
【大阪会場】
 説明会は2週間程度前までにお申し込いただければ、随時開催を致します。
 詳細は、事務局までお問い合わせください。
【場所】 株式会社アポプラスステーション 大阪支店 会議室
    〒541-0043
    大阪府大阪市中央区高麗橋四丁目3番7号 北ビル5階
    大阪市営地下鉄 御堂筋線 淀屋橋駅12番出口より徒歩2分
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②「働きやすい病院(ホスピレート)」認証更新について
「働きやすい病院(ホスピレート)」認証更新年にあたる病院管理者の皆様
には、詳しい資料を送付させて頂いております。詳細等ご不明の点は、大阪
本部/評価事業部までお問合せください。
 事務局メールアドレス  ejnet@ejnet.jp

******<♪NPOイージェイネット メルマガ事務局より編集後記♪>******** 
 5月配信(第30号)のメルマガはいかがだったでしょうか?
今月は日本赤十字社医療センターの木戸道子先生に、産婦人科からのワーク
ライフバランスの実現のための方策等について強力なメッセージを頂きまし
た。特に中医協資料「病院医療従事者の負担軽減事例の実態調査」に基づく
交代勤務制導入にあります日本赤十字社医療センター産婦人科等の先進事例
の取り組みから、女性医師でも働き続けることができる仕組みづくりを構築
されておられ、大変心強く感じられました。
 これからの若い世代の先生方にとっても心に響く前向きな取り組みだと思
いますので、今後もこのような病院が増えて欲しいです。大変ご多忙の中、
木戸先生には素晴らしいメッセージを頂き、ありがとうございました!
当メルマガは、会員や読者による参加型の情報発信を目指しておりますので、
皆様からぜひ載せたい記事やご意見等ありましたら、ご遠慮なくお申し出下
さい。今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。(藤川) 
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・向上をめざす会)) 
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の藤川までご連絡をお願いします。 
(お問い合わせ先  ejnet-office@umin.ac.jp  メルマガ担当藤川) 
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