特定非営利活動法人 イージェイネット(Ejnet)

医療業界の就労環境改善や、適正な人材評価が行われるための仕組みづくりをお手伝いします。

Ejnetメルマガバックナンバー・第34号

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◆◇NPO法人イージェイネット メールマガジン第34号◇◆ 
「時代をリードする医療人が働きやすい病院の作り方、お教えします」 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2012/9/29  ━━━ 

◆◇━━━━━━━━◆◇◆今月のニュース◆◇◆━━━━━━━━━◆◇ 
〔1〕『 あなたの病院に面白いストーリーはありますか? 』
  ◆京都市上京保健センター  担当課長 北川 信一郎 氏
〔2〕『 42名医局長インタビュー調査 』 
  ◆東京女子医科大学医学部衛生学公衆衛生学(一)教室 講師 
                     野原 理子 氏
〔3〕 これからのイベント案内
 ① NPO法人ゆいネット北海道設立記念公開講演会
  『大阪のSACHICOをあなたの地域につくるために』
 ②『新通史 日本の科学技術?世紀転換期の社会史/1995~2011』原書房刊
   全巻完結記念 大阪シンポジウム
〔4〕イージェイネット事務局からのお知らせ
 ・働きやすい病院評価事業(ホスピレート)説明会(10月~)など
〔5〕メルマガ事務局より編集後記

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〔1〕『 あなたの病院に面白いストーリーはありますか?』

 1990年代後半、まだ研修医が終わったばかりの頃、NHKのラジオ講座「や
さしいビジネス英会話」を聞いていました。講師の杉田敏さんが、テキス
トの前書で、アメリカには凄い航空会社があり、その会社は「社員第一、
顧客第二」主義を掲げ、湾岸戦争後の景気後退の中、業績が右肩上がりで
あると書かれていました。丁度その頃、市中病院での過酷な勤務に、「な
んのために医師になったのか?」という疑問を持ちだしていた私は、正直
に感動したことを鮮明に記憶しています。米国勤務が長い知人に、こんな
病院があったらいいなと話したのですが、「そんなにビジネスは甘くはな
いよ」と、そっけない返事でした。
 しばらく、そのことを忘れていたのですが、昨年、『破天荒!サウスウ
エスト航空-驚愕の経営(日経BP社)』を読み、そうか!SW航空のことだ
ったのかと、記憶が蘇えりました。現在に至るSW航空の高業績は、みなさ
んがご存じの通です。SW航空の戦略は、逆張りです。普通なら、「顧客第
一」を理念に掲げるところを、従業員が満足すれば、サービスの質が改善
され、顧客も満足するというふうに考えたのです。ベストセラーとなった
『ストーリーとしての競争戦略(東洋経済新報社)』の中で、著者は、他
社が真似をしようともしないことこそが競争優位の源泉となり、生き残っ
た戦略には、面白い一連の繋がったストーリーがあるのだと指摘していま
す。このことは、当にSW航空にも当てはまるのです。
 ところで、病院が企業と異なるのは、多様なプレーヤーと多様な目的が
存在する多目的な組織であることがあげられます。そこでは、経済的価値
観を持つ事務部門と非経済的価値観を持つ専門職、あるいは現場と経営陣
の間にコンフリクトが生じがちです。ですから、その隙間を対話やコミュ
ニケーションで繋げ、思わず人に話したくなるような面白いストーリーを
つくりだす仕組みが必要になります。
 では、どのようにすればよいのでしょうか?『学習する病院組織(同文
館出版)』の中で、著者は、「連携型リーダーシップ」が必要であると指
摘しています。各部門を代表する複数のリーダーが、協力・分担しながら
組織の学習を促すというものです。
 翻って保健所は、何をすることができるのでしょうか。私は、医療監視
の際、エドガー・H・シャインの提唱するプロセスコンサルテーションを
心がけるようにしています。従来のコンサルテーションがティーチングや
指導であるのに対し、プロセスコンサルテーションは、いわば組織の問題
解決能力を引き出すためのコーチングであると言えます。(詳しくは、
『人を助けるとはどういうことか(英知出版)』を参照してください。)
不適切な点を指摘し、指導をするといったスタイルでは、良くても一時的
な改善がみられるだけで、現場には「やらされ感」が残ります。
 私の保健所(センター)では、現場に行き、一緒になって課題と解決策
を考え、講評の際に、病院の管理者全員に対して伝えるようにしています。
異なった価値観を持つ部門間を繋げる試みは、嬉しいことに少しづつでは
ありますが成果がみられるようになってきました。例えば、かつては、分
厚く全く使われた形跡のない院内感染マニュアルを見て閉口することが多
かったのですが、最近では、現場のスタッフ自らが作成した実践マニュア
ルを誇らしげに運用している様子を窺ったり、また別の病院からは、長年
の懸案事項であった医療安全部門のスタッフの増員問題が解決したとの風
の便りもありました。
 私どもの取り組みは、まだ始まったばかりですが、より良い地域医療を
構築するために、面白いストーリづくりに少しでも寄与していきたいと考
えます。
  ◆京都市上京保健センター  担当課長  北川 信一郎 氏
 *北川先生は、第71回日本公衆衛生学会総会(山口)のミニシンポジウム
  6にて御発表予定です。
  *10月25日(木) 15:10-16:30 第5会場(山口県教育会館第2研修室)
 テーマ:地域医療再生に向けた医師の確保・配置・連携を考える
 ●公衆衛生医師の熟達と経験学習に関する探索的研究
      北川 信一郎 氏(京都市上京保健センター)
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〔2〕『 42名医局長インタビュー調査 』

 病院勤務医のモデル像を示そう!と研究を開始しました。研究のメイン
は医師のタイムスタディ*ですが、各医局でのタイムスタディの依頼を兼
ねて、大学病院内の全42医局の医局長にインタビュー調査を行いました。
調査内容は「医局での勤務環境改善に対する取り組み」についてと「なぜ
大学病院で働いているのか!」についてです。インタビューでは医局長で
ある先生方の生の声を聴くことが出来、私にとっては、非常に有意義な時
間となりました。
 調査結果から、臨床研修制度が開始されて以来、大学病院においても、
各医局で、業務が支障なく進むよう、様々な工夫や努力をされている様子
が伺えました。医局長である先生方は、問題意識も非常に高く、改善を目
指しているものの、ご自身が多忙を極めており、問題に着手できずにいる
状況も推察されました。大学病院では、各医局にある程度の自由度があり、
独自での取り組みのしやすさがある反面、多数の専門診療科における、業
務内容や状況の違いから、大学病院全体としての勤務時間や業務内容等の
制度の策定や管理には限界があることも推察されました。
 そこで、大学病院全体、医局、個人に分けて、それぞれの単位での今後
の改善のための提案をしました。提案の内容は、1.大学病院としての取組
:会議のスリム化、2.医局としての取組:睡眠や休養を取ることの重要性
の周知、3.個人としての取組:自席の整理整頓です。尚、本インタビュー
結果の概要は医学のあゆみで報告させていただきましたので、詳細は医学
のあゆみをご覧いただければ幸いです。 
 また、「なぜ大学病院で働いているのか!」については、大学病院で医
師として働くことのやりがいや楽しさについて熱く語っていただきました。
お話しいただいた医師という職業の素晴らしさについては、ぜひ学部教育
の中で学生にしっかりと伝えていきたいと思っています。
*タイムスタディ:産業医である医師が、産業保健の視点から、被験者で
ある勤務医に1日中張り付き、医師の行動を観察する調査です。被験者の
行動を30秒ごとに記録する方法(30秒スナップリーディング法)で行って
います。 
    ◆東京女子医科大学医学部衛生学公衆衛生学(一)教室 講師 
                       野原 理子 氏
*医学のあゆみ242巻8号(2012年8月25日発行)に、野原先生が担当された
42名医局長インタビュー調査報告が掲載中です!ぜひチェック下さい♪
フォーラム【42名医局長インタビューからみえた勤務環境改善視点】
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〔3〕これからのイベント案内

① NPO法人ゆいネット北海道設立記念公開講演会
 『大阪のSACHICOをあなたの地域につくるために』
  ◆講師:阪南中央病院 加藤治子先生   
【開催趣旨】
 NPO法人ゆいネット北海道は、9月6日に正式なNPO法人となり、北海道
 ・札幌市の事業委託を受けて性暴力被害者支援センターSACRACHを創設
  いたしました。性暴力被害者の生涯に寄り添う支援を第一に、専門組
  織としての窓口相談および生活支援を目指し、今年10月1日より正式
  な活動を開始いたします。つきましては、NPO法ゆいネット北海道設
  立記念として、大阪で先進的に取り組まれている性暴力救援センター
  SACHIKOの加藤治子先生をお呼びして、講演会を開催いたします。
【日時】平成24年10月27日 18時~19時45分
【会場】札幌エルプラザ 3階大ホール
    JR札幌駅北口より徒歩3分(札幌駅北口地下歩道12番出口)
【会費】無料
【主催】NPO法人ゆいネット北海道、北海道女性医師の会
【共催】日本女医会
【後援】北海道医師会、北海道、札幌市
<<★タイムテーブル★>>
17:45~   受付開始
18:15~19:15 加藤治子先生 講演会
19:15~19:45 参加者におけるディスカッション
※20:30より希望者による懇親会を予定しております(1人4千円)
お時間のある方は、是非ご参加いただけますようよろしくお願い申し上げます。
<申し込み、お問い合わせ先>
  担当 ゆいネット北海道 事務局
  Tel:  070-6607-0222
  Mail: hmwa.ml@gmail.com
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②『新通史 日本の科学技術?世紀転換期の社会史/1995~2011』原書房刊
 全巻完結記念 大阪シンポジウム
 【世紀転換期の科学技術と社会】
   <3.11 を踏まえ、あらためて日本の科学技術と社会を問う>
【日時】2012年9月30日(日)午後1時~5時30分
【場所】関西学院大学 大阪梅田キャンパス
   大阪市北区茶屋町19-19 アプローズタワー14F(06-6485-5611)
   タワー内施設:H 阪急インターナショナル、梅田芸術劇場
【主催】通史フォーラム
 <<★プログラム★>>
◎開会あいさつ: 吉岡斉(編集代表・九州大学) 1時~1時10分
I. 総合報告:(20分/1報告) 1時10分~2時30分
1.明石芳彦(大阪市立大学)
 「機能低下した日本産業経済とイノベーション待望」
2.後藤邦夫(NPO 産業技術資料保存調査会)
 「産業構造と社会構造の変化?歴史のなかの世紀転換期」
3.桑原雅子(NPO 学術研究ネット)
 「ジェンダー構造の変容と科学技術・市民社会」
~~~~~~~~~~~休憩 2時30分~2時40分~~~~~~~~~~
II. 執筆メンバーからの話題提供:(15分/1トーク)2 時40 分~4 時10 分
1.松原洋子(立命館大学)「妊娠と出産をめぐる医療の危機と社会」
2.瀧野敏子(NPO イージェイネット)「医療体制の変化と女性医師」
3.中村征樹(大阪大学)「科学技術コミュニケーション」
4.吉野太郎(関西学院大学)「市民活動とICT」
コメンテーター:川野祐二(下関市立大学)(時間は適宜調整)
*イージェイネットのブログにも掲載しています!
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〔4〕イージェイネット事務局からのお知らせ

①働きやすい病院評価事業(ホスピレート)説明会(10月~)
*準備の都合上、3日前までにお申込ください。
【東京会場】
【日程】H24年 10月 24日(火)午後1時~2時
      *11月以降も毎月1回開催予定です。
       11月以降に説明会をご希望の方は、
       イージェイネット事務局までお問合せください。 
【場所】株式会社アポプラスステーション 会議室
    〒102-0071 東京都千代田区富士見二丁目7番2号
    ステージビルディング9F・10F
    JR飯田橋駅 東口/西口 徒歩3分
    東京メトロ 飯田橋駅 東西線 A4出口、有楽町線/
    南北線 B2a出口 徒歩2分
【大阪会場】
 説明会は2週間程度前までにお申し込いただければ、随時開催を致します。
 詳細は、事務局までお問い合わせください。
【場所】 株式会社アポプラスステーション 大阪支店 会議室
    〒541-0043
    大阪府大阪市中央区高麗橋四丁目3番7号 北ビル5階
    大阪市営地下鉄 御堂筋線 淀屋橋駅12番出口より徒歩2分
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②「働きやすい病院(ホスピレート)」認証更新について
「働きやすい病院(ホスピレート)」認証更新年にあたる病院管理者の皆
様には、詳しい資料を送付させて頂いております。詳細等ご不明の点は、
大阪本部/評価事業部までお問合せください。
 事務局メールアドレス  ejnet@ejnet.jp

******<♪NPOイージェイネット メルマガ事務局より編集後記♪>****** 
 9月配信(第34号)のメルマガはいかがだったでしょうか?
 今回は、京都市上京保健センターの北川先生に、印象的なタイトルのコ
ラムをご執筆頂きました。普段は外部には多く語られることのない医療監
視ではありますが、そこでプロセスコンサルテーションというコーチング
の概念を取り入れられ、現場のスタッフと一緒になって課題と解決策を考
え、異なった価値観を持つ部門間を繋ぐような取り組みもされておられま
す。また皆様の働きやすい病院作りに取り組む際のご参考になればと思い
ます。
 野原先生には先月のメルマガに引き続き、今回は『42名医局長インタビ
ュー調査』についてご報告頂きました。大学病院内の全医局長への勤務環
境改善に対する取り組み等に対するインタビューだけでも貴重な研究報告
だと思われますが、さらに大学病院全体、医局、個人のレベルそれぞれの
単位での今後の働き方の改善のための様々な御提案も頂きましたので、ぜ
ひご一読ください。
(詳しく知りたい方はぜひ「医学のあゆみ」をご参照下さいませ)
 イベント案内では、NPO法人ゆいネット北海道様より、性暴力被害者支援
センターSACRACHの設立記念公開講演会のご紹介も頂いております。性暴力
被害者の生涯に寄り添う支援を行われるとのことであり、こちらの活動は
地域や関係者からも大変期待されているものとご推察いたします。お近く
の方はご都合がつきましたらぜひご参加下さい!
当メルマガは、会員や読者による参加型の情報発信を目指しておりますので、
皆様からぜひ載せたい記事やご意見等ありましたら、ご遠慮なくお申し出下
さい。今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。(藤川) 
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 NPO法人イージェイネット  http://ejnet.jp/ 
(特定非営利活動法人 イージェイネット(女性医師のキャリア形成・
 維持・向上をめざす会)) 
*NPO法人イージェイネットブログも更新中!  
 このメルマガに対し、ご意見・ご感想・ご質問がありましたらメルマガ
 担当の藤川までご連絡をお願いします。 
(お問い合わせ先  ejnet-office@umin.ac.jp  メルマガ担当藤川) 
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