特定非営利活動法人 イージェイネット(Ejnet)

医療業界の就労環境改善や、適正な人材評価が行われるための仕組みづくりをお手伝いします。

Ejnetメルマガバックナンバー・第56号

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◆◇NPO法人イージェイネット メールマガジン第56号◇◆
「時代をリードする医療人が働きやすい病院の作り方、お教えします」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2014/7/31  ━━
 
◆◇━━━━━━━━◆◇◆今月のニュース◆◇◆━━━━━━━━━◆◇

〔1〕『 働きやすい職場について 
       ~3つの業界、4つの法人に勤務して思うこと~』
 
 ◆地方独立行政法人 加古川市民病院機構 
            機構事務部 人事課長  淺原 太郎 氏
 
〔2〕今後のイベントのご案内
 『帝京大学男女共同参画シンポジウム』
 「女性研究者研究活動支援事業」に採択された3大学の取り組み
      ~それぞれのオリジナリティーと今後の連携について~」
 
〔3〕イージェイネット事務局からのお知らせ
   * 働きやすい病院評価事業(ホスピレート)説明会など
 
〔4〕メルマガ事務局より編集後記
 
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〔1〕『 働きやすい職場について 
       ~3つの業界、4つの法人に勤務して思うこと~ 』
 皆様はじめまして。淺原太郎と申します。現在兵庫県加古川市の加古川
市民病院機構で人事担当として勤務しております。兵庫県加古川市は、黒
田官兵衛の妻 光姫の出身地ですが、TVで放映されているような田園風景ば
かりではなく、人口26万人の地方都市なのですよ。今回、縁あってこの
メルマガを書かせていただくことになりました。はじめに、自己紹介をさ
せて頂きます。
 
 私は日本がバブル真っ盛りの頃社会人としてのスタートを切りました。
当時は今と違って超売手市場で“就活”は内定をいくつとったかで同期と
競い合うような時代でした。日本はまだ年功序列・終身雇用の時代で、皆
できるだけ“労働条件の良い”企業や組織をピックアップしたものでした。
私自身は、流通業界大手に入社し、海外を含めた積極的多店舗化展開を推
し進める会社の人事担当として働き始めました。
 
 皆さまご承知のとおり、バブルはすぐに崩壊し、私が入社した会社は倒
産。経営トップの戦略には問題があったのでしょうが、幸いにも、社員教
育や実践配置には先進的であったようで、そのお陰で転職先はすぐに決ま
りました。電子部品業界の人事担当です。バブル崩壊後、日本はモノ創り
回帰の時代を迎えており、日本のエレクトロニクス産業が世界を牽引する
時代になっていました。産業が栄えると、その組織を運営していく新しい
ノウハウが求められ、各社が競って人事制度改革を進めていたことを記憶
しています。この時、私も企業の中枢部門で制度改革(人事制度構築、教
育システム開発、グルーバル人事、キャリア開発等)を経験することが出
来ました。
 
 エレクトロニクス業界で基本的な組織人事に関する知識を習得して、一
通りの改革を経験したころ、日本では今度は自動車産業が世界のトップに
席巻しようとしていました。同時に、少子高齢化が社会問題として大きく
クローズアップされ始め、“医療業界”にも注目が集まるようになったの
は皆さんの記憶にあたらしいところだと思います。ちょうどその頃に、医
療業界の組織人事改革の仕事のお話をいただいたのが医療業界に入るきっ
かけでした。当初は、“医療産業?”というよりも“病院”というイメー
ジを持っておりましたので、医療職の職場に産業界の仕組みが役に立つも
のかどうか半信半疑でしたが、少子高齢化という社会問題とは裏腹に、産
業としては30兆円規模という当方もない大きさに驚きつつ、転身を決め
たことを覚えています。
 
 医療業界(勤務したのは大都市の急性期総合病院700床クラス)にきてと
にかく驚いたことは、組織的なマネジメントが(ほとんど)存在しない社会
だということでした。まさに、スペシャリスト集団!知識と技術、経験を
絶対的な基盤とした徒弟制のように思いました。更に、労働基準法や就業
規則は適用されない、と考えられていた方もいたほどで、医師を始めとす
る医療従事者の過重労働が表面化してきている頃でした。
 
 さて、前置きが長くなりましたが、私が医療業界でWLBに関わるように
なったのはこの病院での委員会活動がきっかけでした。当初は女性医師
支援を目的とした活動でしたが、その後全職員を対象とした委員会となり
ました。前職のエレクトロニクス時代にも、厚労省が主導するファミリー
フレンドリー企業認定に関する活動も経験していたこともあって、違和感
はありませんでしたが、先にも書きましたが、労基法も就業規則もどこ吹
く風のような雰囲気でしたので、情報共有を進めると同時に、女性医師の
結婚、出産、子育てを物理的に支援することからスタートしていきました。
 
 保育施設はすでに整っていましたので、時間延長や病児保育、柔軟な働
き方への規程整備等です。これらは、病院長を始め、経営幹部の理解があ
れば費用の工面がある程度できればどの組織でも可能であると考えます。
しかし、難しいことは、設備が整って、規程が整備されたあとに、「これ
らを“あるべき姿”に照らして適切に運用し続けることができるか」と言
うことだと思います。
 
 これらの設備や制度は、基本的に性善説のもとに成り立っていると私は
考えています。つまり、すべての人(支援する人もされる人も)が他人を思
いやり、組織貢献を望み、支援されたことがあるならば、次は誰かを支援
したいと思える人々の集まりでないと限界が来るということです。
 
 女性医師は全医師の3割を超え、看護師の多数は女性です。今後、さら
にこれらの設備や制度を活用する人が増えてくるでしょう。そうすると、
今多くの組織が導入していたり、これから導入しようとしている仕組みだ
けでは、(部分的に)不足する労働力を補うことは極めて難しいと考えます。
制度疲労せず、しかもせっかくここまで整備が進んできたシステムが元の
木阿弥にならないようにするためにはどうすればよいのかです。
 
 確実に言えることがあるとすれば、唯一無二ではダメだということでは
ないでしょうか?行政が法律で強制するだけでは、民間医療機関の多くが
破綻してしまうでしょう。反対に、規制の枠を緩めれば“ブラック病院”
がはびこるかもしれません。では、どうするのか!
 
 数年前に、ダニエル・ピンク氏の「モチベーション3.0」という本を
読みました。彼によると、人間社会にもコンピュータと同様に人を動かす
基本ソフトがあるとのことです。それは、3つあり、一つはモチベーショ
ン1.0=生存を目的とする人類最初のOS。次は、モチベーション2.
0=アメとムチ:すなわち、信賞必罰に基づく、与えられた動機づけによ
るOS。彼によるとアメとムチのやり方はルーティンワーク中心の時代は
よかったのだが、今では機能不全に陥るとのこと。
 
 そして最後に三つめがモチベーション3.0=自分の内面から湧き出る
「やる気」に基づくOS。活気ある社会や組織を創るための新しい「やる
気」の基本形。このモチベーション3.0こそが、これからの日本社会
(医療業界)の組織行動に対して大きなヒントになるように思えます。病院
経営者の先生方や、部門管理者の皆さまにお勧めの本です。ご興味のある
方はご一読ください。
 
 医療業界におけるWLBの取り組みも、経営者の皆さまをはじめ、多数
の方々のご努力によって、ダニエル・ピンク氏の言う“2.0”には到達
してきているように私は思います。大事なのは、ここからではないでしょ
うか!皆が“3・0”に向けて進んでいくことが、結果的に働きやすい業
界に繋がっていくように思います。越えていかなければならない壁はたく
さんあると思います。しかし、越えようとする行動をやめない限り、必ず
先へ進めるものと信じたい。
 
 この本を翻訳された大前研一氏は、まえがきで、“人間の癖を直すには
しつこさが必要だ”そして、“過去の時代の慣習が 悪い癖 であるなら、
新しい時代を迎えるためにも、新しい習慣や癖を身につけるために何度で
も反復する必要性がある“と言っています。彼が言うように、“結果を求
めるのではなく、そのプロセスを正しく踏むこと”が近道ではないでしょ
うか。
 
↓地方独立行政法人 加古川市民病院機構のホームページです。           
 
   ◆地方独立行政法人 加古川市民病院機構 
             機構事務部 人事課長  淺原 太郎 氏
                        
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〔2〕今後のイベントのご案内
 
『帝京大学男女共同参画シンポジウム』
 「女性研究者研究活動支援事業」に採択された3大学の取り組み
      ~それぞれのオリジナリティーと今後の連携について~」
 
<当日プログラム> 
【開会挨拶】 帝京大学女性医師・研究者支援センター長/帝京大学常務理事 
          沖永 寛子 氏 
【基調講演1】  
「東京医科大学医師・学生・研究者支援センターにおける取り組みについて」 
 東京医科大学医師・学生・研究者支援センター長 大久保 ゆかり 氏 
 
【基調講演2】 
「宇都宮大学における男女共同参画の取り組みについて」 
 宇都宮大学女性研究者キャリア支援室副室長 艮 香織 氏 
 
【報告】 
「保育ニーズ・ワークライフバランス・ハラスメントに関するアンケート調査
 結果について] 
  帝京大学女性医師・研究者支援センター研究員   竹内 真純 氏 
 
【総括】帝京大学女性医師・研究者支援センター室長  野村 恭子 氏 
 
【閉会挨拶】 帝京大学理事長/学長  沖永 佳史 氏 
 
★シンポジウム終了後(12時30分~13時45分) 病院棟6階グリーンズカフェ
 にて軽食会を行う予定です。(無料) 
 
■開催日時:2014年8月30日(土)、10:00~12:20
■会 場 :帝京大学板橋キャンパス 本部棟4階会議室1
■参加費 :無料
■申 込 :不要
 
<お問い合わせ>
帝京大学女性医師・研究者支援センター
Tel:03-3964-8456
Mail:women@med.teikyo-u.ac.jp
 
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〔3〕イージェイネット事務局からのお知らせ

 
*働きやすい病院評価事業(ホスピレート)説明会
  東京と大阪にて、働きやすい病院評価・認証の説明会を
  事前予約制にて開催しております。
  説明会参加の旨をお申しでいただきましたら、
  随時、個別にて調整をさせていただきます。
  詳細は、イージェイネット事務局までお問い合わせください。
 
【場所】株式会社アポプラスステーション 会議室
    〒102-0071 東京都中央区日本橋二丁目14番1号フロントプレイス日本橋8階
    JR東京駅 八重洲地下街23番出口より徒歩7分
    地下鉄日本橋駅 D1出口徒歩30メートル(浅草線・東西線・銀座線)
    地下鉄茅場町駅 12番出口徒歩3分(東西線・日比谷線)
 
    *平成26年4月より東京会場の場所が変更になりましたのでご注意ください。
 
【大阪会場】
 説明会は2週間程度前までにお申し込いただければ、随時開催を致します。
 詳細は、事務局までお問い合わせください。
 
【場所】 株式会社アポプラスステーション 大阪支店 会議室
    〒541-0043
    大阪府大阪市中央区高麗橋四丁目3番7号 北ビル5階
    大阪市営地下鉄 御堂筋線 淀屋橋駅12番出口より徒歩2分
 
******<♪NPOイージェイネット メルマガ事務局より編集後記♪>*******
 7月配信(第56号)のメルマガはいかがだったでしょうか?
今月は、加古川市民病院機構事務部の淺原課長様にご登場頂きました。実は
イージェイネットメルマガでは、事務部門の管理職の方がご登場頂いたのは
この56号が初めてとなります!でも実は病院は事務部門のスタッフの皆様の
働きに支えられている所が大いにあるのは皆様も御承知の通りです。
 
 淺原課長様の流通業界などの産業界の勤務を経て、総合病院の事務部門で
ご勤務されたご経歴とご経験より、今回のメルマガでは大変興味深いご提言
を頂きました。病院の就労支援の環境や規定が整備されても、制度を利用し
た方たちが、次は誰かを支援したいと思える人々の集まりでないと、継続性
の担保は難しいのではというご指摘はもっともだと感じました。
 
 そしてやる気のモチベーション3.0を引き出すにはどうすべきか。こちらは
当メルマガのコラム執筆者やWLB支援に携わる先生方からもたびたび問題提起
されている共通項の悩みだと思います。ダニエル・ピンク氏の名著もとても
参考になりますし、これからのWLB支援には環境整備だけでなく、スタッフの
モチベーションアップの取り組み報告が必要とされるかも…と感じた次第で
す。(このあたりも看護部門の取り組みの方が先進的ですね!)
 
 もう一つ個人的に思った事ですが事務部門からも力強いサポートがあれば
やはり他の医療職の皆様も心強く感じられ、これもまた働きやすくなる有効
な方策につながるのではと強く思いました。淺原課長様には今回コラムご執
筆をお引き受け頂きまして、誠にありがとうございました!
 
 当メルマガは、会員や読者による参加型の情報発信を目指しております。
皆様からぜひ載せたい記事やご意見等ありましたら、ご遠慮なくお申し出下
さい!!(藤川)
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 NPO法人イージェイネット  http://ejnet.jp/
(特定非営利活動法人 イージェイネット(女性医師のキャリア形成・
 維持・向上をめざす会))
*NPO法人イージェイネットブログも更新中!
 
 このメルマガに対し、ご意見・ご感想・ご質問がありましたらメルマガ
 担当の藤川までご連絡をお願いします。
(お問い合わせ先  ejnet-office@umin.ac.jp  メルマガ担当藤川)
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