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Ejnetメルマガバックナンバー・第79号

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◆◇NPO法人イージェイネット メールマガジン第79号◇◆
「時代をリードする医療人が働きやすい病院の作り方、お教えします」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2016/7/31  ━━
◆◇━━━━━━━━◆◇◆今月のニュース◆◇◆━━━━━━━━━◆◇
〔1〕『 医療安全と看護師の作業環境 マネジメントの視点から2』        
     ◆地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪府立成人病センター 
        7階北病棟(骨・軟部腫瘍整形外科) 看護師長 山田眞佐美 氏  
〔2〕イージェイネット事務局からのお知らせ   
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〔1〕 『 医療安全と看護師の作業環境  マネジメントの視点から2 』
 
地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪府立成人病センター
       7階北病棟(骨・軟部腫瘍整形外科) 看護師長 山田眞佐美
 
 
 がんと循環器の専門病院、大阪府立成人病センターで看護師をしております山田眞佐美です。現在は病棟看護師長として、職場環境マネジメントに取り組んでおります。
働きやすい職場づくりという言葉は、今や病院の理念に取り上げられるほどのキーワードになっています。医療専門職の過半数を占める看護師にとって働きやすい職場とは、どのような職場なのでしょうか。前回に引き続き考えていきたいと思います。
 
 私が病棟看護師251名を対象に実施した看護師の作業環境調査では、看護師の8割が医療事故を起こすのではないかという不安を抱えながら仕事をしていました。看護師の作業環境には「狭い」という問題が根底にあります。作業レイアウトの悪さは医療事故を起こすのでないかという不安と有意に関連し、職場の安全や働きやすさ、人間関係、ひいては勤務継続意志にまで有意に関連していることが明らかになりました (注1)。
 その研究では、作業環境調査で高評価を得た病棟の看護師長に共通していた実践内容についても調べました(注2)。いずれの看護師長も、職場環境を改善しなければいけないという思いをもち、物品の整理・整頓を行っていました。看護師が作業しやすいようにスペースを確保し、動線を考えたレイアウトを工夫して、スタッフが安全に動けるように配慮していました。
 看護師の職場環境を改善するには他職種の協力が不可欠です。スタッフが働きやすいと評価した病棟の看護師長は、他部門と連携・調整をはかり、不良箇所の修繕や環境美化、物品購入を計画的に実施していました。こうした日々の地道な努力は、数字に表されるものではありません。患者さんに直接提供する看護とも違って、目には見えにくい、縁の下の力持ち的役割をされていることがわかりました。看護師にとって働きやすい職場とは、安全に安心して働ける職場に他ならないと考えます。そのためには、物の管理にもっと注目して、忙しく動き回るスタッフが見過ごしがちな細かい部分に目を配る必要があります。
 
 私が物品管理で注目している3大ダメダメ現象があります。「物がない」「物を探す」「物が落ちる」です。職場でこの現象が見受けられるときは、要注意。非効率が発生している証拠です。物のトラブルの陰には人の影あり、職場の人間関係にも影響を及ぼします(注3)。なぜならば、物は勝手には動かないからです。職場でスタッフがもめている様子を観察すると、あったはずの物がその場にないとか、物を置きっぱなしにしているという声が聞こえてきます。問題分析を行い早急な改善が必要です。
 物にぶつかる、つまずく現象も要注意です。異動した先の看護師長の机の横には、厚さ5㎝の整理カゴがマグネットで貼り付けられていて、その中には電話帳や手術患者のリストなど、厚さ3ミリ程度のファイルが5つ入っていました。最初は、この配置が使いやすいのだと思っていましたが、看護師がパソコンカートを押して動くたびに、そのカゴにぶつかっては、「すみません」と謝って通り過ぎるのです。パソコンカートを押していない時にも、看護師だけでなく医師もぶつかって通り過ぎるのです。こうなると本人の不注意ではありません。配置、つまりレイアウトが悪いのです。私はスタッフに理由を説明して、そのカゴをなくす、もしくはレイアウトを変更できないか呼びかけました。副看護師長を中心に検討してくれた結果、皆がぶつかっていたカゴは他の場所に配置されました。ついでにその周辺も整理してくれたので、見た目がすっきりとしました。次は変えてみてどうかの評価です。今までそのレイアウトで慣れているスタッフにとって、物を探さなければいけないことは非効率につながります。たとえどのような小さな物でも、物を動かす時にはスタッフが困らないように周知させることが必要です。
 
そうやってPDCAサイクルを回し続けることが、その職場にあった作業効率のよいレイアウトにつながっていきます。交代勤務で一同が会する機会のない看護師の職場で、物を動かす、レイアウトを変えることは、実はとても難しく、勇気とエネルギーがいる作業なのです。
 前述の研究では、対象者の8割が、自分の職場の棚の上に物が置かれていると回答していました。看護師の職場は「狭い」という問題が根底にあり、整理・整頓がうまくできないとこういった現象が引き起こされ、積み重ねた物が落ちたり、物にぶつかったり、またなおすといった小さな非効率があちらこちらで発生しているのです。マネジメントの目的は最小資源の最大効率です。人、モノ、カネ、時間、どれもギリギリの状態で行っているのが今の日本の医療現場です。スタッフの動きや表情をよく観察して、問題点を分析して改善につなげることが職場安全、医療安全、スタッフの安全・安心、ひいては患者サービス向上につながるということを肝に命じて、職場環境マネジメントに取り組んでいます。
 
(注1) 山田眞佐美:看護師が抱える医療事故への不安と作業環境との関連性,第44回日本看護学会論文集 看護管理,p149-152,日本看護協会,2014
(注2) 山田眞佐美:看護管理者の安全衛生や職場改善への関心が看護師の作業環・医療事故への不安・勤務継続意思に及ぼす影響,第44回日本看護学会論文集 看護管理,p153-156,日本看護協会,2014
(注3) 山田眞佐美:職場環境は人間関係に悪影響を及ぼすか,第53回全国自治体病院学会抄録集,p68,2014
 
 
[2]イージェイネット事務局からのお知らせ
 
 *働きやすい病院評価事業(ホスピレート)説明会
  東京と大阪にて、働きやすい病院評価・認証の説明会を
  事前予約制にて開催しております。
  説明会参加の旨をお申し出いただきましたら、
  随時、個別にて調整をさせていただきます。
  詳細は、イージェイネット事務局までお問い合わせください。
 
【場所】株式会社アポプラスステーション 会議室
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【大阪会場】
 説明会は2週間程度前までにお申し込いただければ、随時開催を致します。
 詳細は、事務局までお問い合わせください。
 
【場所】 株式会社アポプラスステーション 大阪支店 会議室
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