特定非営利活動法人 イージェイネット(Ejnet)

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Ejnetメルマガバックナンバー・第84号

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◆◇NPO法人イージェイネット メールマガジン84号◇◆
「時代をリードする医療人が働きやすい病院の作り方、お教えします」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2017/11/6━━ 
 
◆◇━━━━━━━━◆◇◆今月のニュース◆◇◆━━━━━━━━━◆◇
〔1] 『カナダで医学と音楽をきわめる』
   ◆NPO法人イージェイネット ホスピレートサーベイヤー
    国立国際医療研究センター国府台病院
          内野 三菜子  氏
 
 [2] イージェイネット事務局からのお知らせ 
   ◆「使えるカウンセリング」シリーズのお知らせ
   ◆「内科」に執筆
 
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  カナダで医学と音楽をきわめる
 
     国立国際医療研究センター国府台病院
        内野 三菜子  氏
 
こんにちは。今日は医師としてちょっと変わったライフスタイルを模索中の私のお話をさせてください。
私は放射線腫瘍医ですが、現在、日本の臨床業務からはいったん離れています。臨床業務だけでなく、日本からも居場所を離れて主にカナダに住まい、カリヨンと呼ばれる、教会の塔についている鐘の演奏の勉強のため、首都オタワにいます。楽器はカナダ連邦国会議事堂の中心に立つ塔の中に設置されており、時報とは別に手動で演奏することが可能で、バロックの曲から最新のポップスまで、4オクターブに並んだ鐘を用い、様々な曲を奏でます。
 
私がカリヨンと出会ったのは2009年のこと、カナダ・プリンセスマーガレット病院の放射線腫瘍科で初めての日本人フェローとして、いわゆる社会人大学院生のような形でトロント大学の医学教育の修士課程の大学院生をしながら、日中はクリニックのフェローをするというプログラムに入りました。オンタリオ州はその国の専門医資格を持っている場合には最長3年間、クリニカルフェローとして教育病院で臨床業務に従事することが可能です。このトロントでの生活開始とほぼ同時期に出会ったのが、大学敷地内に設置されていたカリヨンでした。元々音楽の素養は多少ありましたが、真剣に学んだ結果、2年ほどでトロント大学の卒業式での演奏を任されるまでになりました。しかし、日本での演奏者は片手で数えるほどしかいません。2013年の帰国後、国内に唯一公共の場に存在する伊丹市の楽器(JR伊丹駅西口「フランドルの鐘」)での年2回の演奏会に出るうちに、在日ベルギー大使館でのイベントでの演奏に招待されたり、雑誌「サライ」のウェブ版に取り上げられるなど、次第に演奏者としての活動も増えてきました。そんな中で、トロントにいる時にも何度か習ったことのある、カナダ連邦カリヨン奏者(日本ならば宮内庁雅楽部のような役割です)から、首都オタワのカールトン大学に新たに開設された、2年制のカリヨン専修コースへの入学を勧められたのです。確かに、演奏者として公的な機関から依頼を受ける時には、演奏者としての肩書きは先方のためにも必要です。前回のカナダ滞在中に取得した永住ビザは5年のうち2年、カナダに滞在することが求められ、これは学生として滞在しても構わないものですから、ビザを維持する意味でもカリヨン専修コースへの進学は合目的でした。さらに言えば、いくら少ないとはいえ、放射線腫瘍医の専門医が日本全体で片手に数えあげるほど、ということはありません。片やカリヨンの演奏者は片手で数えるのものやっと、という人口の少なさを考えると、演奏する機会がいくら少ないとはいえベルギーから送られた本物の楽器が日本国内に一つでもあり、その存在がベルギーにも知られている以上、その維持に「専門家」はどうしても必要です。どちらがより社会に貢献しうるか。たかが音楽と侮れない状況がここにあります。
 
カナダから帰国してからはもちろん放射線腫瘍医として勤務していましたが、並行して製薬企業での市販後調査のレビューにも携わっていました。放射線腫瘍医はほとんどと言っていいほど薬を処方する場面がなく、しかもその処方もごく限られています。そのため、市販後調査のレビューをする薬剤は一切処方する機会のないもののため、利益相反なども気にせずに済みます。実際に臨床の現場で医師がどういう状況でレポートを出しているのか、臨床医にしか理解しづらい部分を企業側のスタッフに共有し、より精度の高いレポートをPMDAへ報告するのは、「育薬」において医師の専門性を生かせる仕事として非常に興味深いものであり、特に今年度に入ってからは大学医学部と連携し、社会医学の一環として、「育薬」のあり方の卒前教育を展開しています。現在はカナダから、遠隔会議で業務に携わっています。遠隔診療がようやく解禁されたばかりの医療業界と異なり、一般企業では遠隔会議とメールのやり取りだけで仕事を運営していくことに何の心理的抵抗も業務の支障もありません。また、演奏会などのために日本に度々帰国することもあるので、その際には実際に会議にも出席しています。
日本とカナダの時差を利用し、医師の専門性を生かした市販後調査レビューの業務を続けながら、音楽の研鑽に励んでいる、今の私の働き方はそういう状況です。
 
もちろん、2009年に最初にカナダに来た時には、まさか今のような形で仕事をすることになるとは思っていませんでした。この大きな変化は、技術の進歩と発展、そして社会に求められる医師の専門性のあり方とがものすごいスピードでどんどん変わってきている現れでしょう。また、時代に応じて変化する専門性に合わせ、医師になってから国内外で学び直しをしたいと願う医師や、医師としてのキャリアの早いうちから別の活動と両立したいと願う医師も、以前よりその希望を表明しやすい時代になっているようにも感じます。そして、女性医師の増加により、出産育児支援と専門性の両立については以前よりも取り上げられるようになってはいますが、まだ十分とはいえません。そもそも働き方の多様性の実現は、単に女性のライフサイクルの問題解決手段だけにとどまらないもののはずです。男女問わず、子育てや介護との両立の問題もあります。医師個人のいろいろな希望、事情、それらを踏まえた上で、最終的に患者さんに、社会に自らの働きが最大限に還元されるように働くにはどうしたら良いか、社会として模索していく、同時に医師としても個人個人で模索していくことが、これからますます求められるのではないかと思います。誰かの先例はその後の王道になるかもしれません。舗装された道があるならば後から行く人はそれを行けば良いし、新しく道を切り開くには苦労とともに楽しみもあるでしょう。あらゆる可能性を柔軟に考え、対応する、そういう個別のケースをできる限り大切にするような職環境の醸成が、働く人本人そして現場の同僚、最終的には患者さんに至るまで、すべての人に恩恵をもたらすものと考えます。
 
Brigitte Lesne Septime Estampie Real
 
 
 
 [2] イージェイネット事務局からのお知らせ 
 
   ◆医療人限定「使えるカウンセリング」シリーズのお知らせ
     10月9日に1Day セミナーを開催いたしました。
     (内容:『感情処理法』『情況対応型コミュニケーション理論』)
 
   ◆ 臨床雑誌「内科」(Vol.120 No.5)2017年11月号に  
「未来は明るい! 明日を担う女性医師の活躍 第2回NPOの取り組み」と題いて執筆しました。
 
 
 *働きやすい病院評価事業(ホスピレート)説明会
  東京と大阪にて、働きやすい病院評価・認証の説明会を
  事前予約制にて開催しております。
  説明会参加の旨をお申し出いただきましたら、
  随時、個別にて調整をさせていただきます。
  詳細は、イージェイネット事務局までお問い合わせください。
 
【場所】プライマリー・アシスト株式会社本社・東京支社 会議室
 東京都千代田区四番町4-8 野村ビル4階
  JR市ヶ谷駅/地下鉄市ヶ谷駅3番出口より徒歩4分
  地下鉄麹町駅6番出口より徒歩4分
  JR四ツ谷駅麹町口より徒歩7分
 
【大阪会場】
   説明会は2週間程度前までにお申し込いただければ、随時開催を致します。詳細は、事務局までお問い合わせください。
 
【場所】プライマリー・アシスト株式会社本社 関西支店 会議室
大阪市北区梅田1-1-3 大阪駅前第3ビル7階 
JR大阪駅より徒歩約8分 
阪神梅田駅より徒歩約5分 
阪急梅田駅より徒歩約10分
    
※ メールマガジンの配信を当分の間、月刊から季刊に変更いたします。
次回の配信は2018年1月です。
 
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(特定非営利活動法人 イージェイネット(女性医師のキャリア形成・
 維持・向上をめざす会))
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